妊娠中のマイナートラブルといわれる症状やお悩みについて解説

産科診療その他の症状

出血、下腹部痛

妊娠初期(12週ごろまで)は特に出血や腹痛の症状が出やすい時期です。なぜなら、お母さんから赤ちゃんへ酸素や栄養をとどける血管(血液のとおり道)の発達が十分でないからです。一時的に症状が出てもほとんどの場合は改善しますので不必要に不安がることはありませんが、過度の運動や長時間の労働は避けるようお心がけください。

出血と腹痛の程度をご自身の普段の月経(生理)と比較してみて、それよりも強い症状の場合は(判断に迷われたらいつでも)クリニックへご連絡ください。

妊娠中期以降は、「おなかの張り」がよくわからない場合もありますが、そのようなときは慣れるまでは頻繁におなかを触ってください。立っているとき、座っているとき、寝ているときでおなかの固さをチェックしてみると、空気で膨らませたビーチボールのように「パーン」とした感触がわかるようになります。

必ずしも痛みや違和感をともなわない場合もありますので、何より普段から触って感触を確かめてみてください。

マイナートラブル

妊娠期間を通して、母児に大きな危険の原因とは必ずしもならなくても不快に感じさせてしまう症状などを一般に「マイナートラブル」として扱っています。

はきけ(つわり)

妊娠初期は「つわり」として知られています。妊娠12週ごろまでには改善するとされています。
まったく食事が出来なくなったり、水分の摂取が難しくなったらお早めにご相談ください。
食事内容の工夫やはきけ止めの薬などのいくつか対処法がありますが脱水やけいれん予防のために入院して点滴管理が必要な場合もあります。

頭痛

妊娠12週ごろまでにピークを迎える緊張性頭痛は、眼精疲労や長時間おなじ姿勢をつづけたりして増強する場合が多いので、後頭部の加温やマッサージで対応します。
妊娠後期で出現する頭痛は、循環血液量の増加による高血圧症や脳血管障害の恐れもあるので慎重な管理が必要です。早めのご相談をお願いいたします。

むし歯

妊娠中はむし歯が悪化したり、歯ぐきが腫れやすくなります。
なぜならば妊娠によって増加した女性ホルモンが歯周組織の細菌を増殖させるはたらきがある、つわりがひどくて歯磨きがおろそかになる、歯のカルシウムが赤ちゃんの材料として奪われやすくなる…
などの理由が考えられるからです。

むし歯の細菌が子宮に感染して、早産の原因となった報告もありますので、治療は非常に大切です。
歯科治療に必要な薬や麻酔が赤ちゃんに与える影響は、妊娠14週以降ならばかなり軽減するのでおなかが大きくなって診察台に乗るのが苦しくなる前に治療をお受けになるようおすすめいたします。

胸焼け・胃痛

妊娠子宮が増大するにつれて胃を圧迫したり食道と胃の境界にある括約筋が緩みやすくなって胃液が食道下部に逆流することで症状が出やすくなります。
ゆっくり食事をとる、食事の回数を増やし1回量を減らす、就寝時上半身をやや起こして子宮の上腹部圧迫を緩和するなどで対処します。

妊娠線

妊娠線はおなか・おしり・太ももの表面が引き伸ばされて、皮下組織が断裂して生じます。妊娠中は赤みを帯びていますがお産後は瘢痕となって白くなります。
急激な体重増加を防ぎ保湿クリームを塗りこんで皮膚の柔軟性を保つことが大切です。

むくみ

妊娠中は血液量が増えるため誰もがむくみやすくなっています。そのうえで貧血がひどくなって血液が薄くなったり、長時間の歩行・立位でむくみが出現します。鉄分を意識的に補給したり、足を台に乗せて座ったり横になったりすると改善することも多いです。まれに血圧上昇や腎機能の低下が原因である場合もありますので長びく際はお早めにご相談ください。

静脈瘤

おもに足や会陰部に血管が浮き出るように腫れる状態を静脈瘤といいます。
子宮が増大して骨盤の中の周囲の組織が圧迫されるため血液が停滞しやすくなり出現します。ほとんどの場合出産後に改善するので経過観察となりますが、歩行障害や痛みが生じている場合はお早めにご相談ください。

妊婦の30~40%でみられ、妊娠の進行や分娩によりひどくなる場合もありますが、大抵は1か月健診のころには改善しています。おなかに力を入れすぎると症状は増悪するので腹圧をかける動作を避け、出来るだけその都度還納するよう指導しております。

風邪

妊娠初期は出来るだけ薬の使用は避けたいので、まずは規則正しい生活・十分な睡眠・うがい手洗いを行ってください。特にご家族が風邪ひいた場合、主婦である妊婦さんがお世話するうちに感染してしまうことが多いのでご家族の衣服や寝具、食器に触れたあとは注意が必要です。おなかが大きくなると横隔膜を子宮が刺激して咳が止まりにくくなりやすいので早めにご連絡ください。

季節性のインフルエンザウィルスに対しては、妊婦の重症化を予防するためにも予防接種が推奨されています。妊娠・授乳期間をとおしていつでも接種できますのでお気軽にご相談ください。

花粉症

妊娠初期は出来るだけ薬の使用は避けたいので、メガネやマスクなどの予防策を行ってください。状況により点眼薬・点鼻薬は使用可能です。症状がひどい場合は内服薬を使う場合もあります。

高血圧

妊娠が進行するにつれて子宮が増大し、赤ちゃんも大きくなって重くなり母体の体重も増加して妊婦さんは大きなストレスにさらされるようになります。からだのバランスを欠く症状の一つとして高血圧があります。140/90mmHgを越える様になると妊娠高血圧症と診断されて治療が必要となります。

高血圧を起点としてさまざまな症状を起こすときは妊娠高血圧症候群とよばれ、母児の状態が悪化する可能性があるので早急な対処が必要です。
日頃から過剰な塩分摂取や急激な体重の増加、ストレスを増強するような生活を改善する工夫が大切です。

破水

赤ちゃんを覆う膜が破けると羊水が流出し「破水」となります。
出産のとき必ず起きる現象ですが、その後しばらくたっても出産にならないときは母児に細菌感染のリスクが生じるので注意が必要です。臨月になる前であっても、頻繁に子宮収縮を繰り返すうちに破水する可能性があります。赤ちゃんがまだ未熟であっても出産(早産)させないと危険な場合もありますので、水っぽいおりものが多い時は早めにご連絡ください。

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