妊娠中期に見られる症状やお悩みについて解説

産科診療妊娠中期の症状や疾患

便秘・痔

便秘

子宮が大きくなるにつれて腸管を圧迫し、妊娠中に女性ホルモンであるプロゲステロンが増加して腸の動きが鈍くなり便秘が起きやすくなります。適度な運動や繊維の多い野菜・果物・海藻の摂取、十分な水分補給で改善しなければ下剤が必要になる場合もあります。

妊婦の約30~40%で認められますが、ほとんどの場合産後に改善します。子宮が大きくなってお腹が圧迫されていることや、便秘による排便時のいきみで起きやすくなります。症状によって妊娠中でも軟膏で対処します。

切迫早産・早産

切迫早産

早産が「切迫」している、つまり早産しかかっている状態。ただし、正常妊娠へ復帰する可能性もあります。くり返す子宮収縮・性器出血・子宮口の開大(赤ちゃんの出口が開き始めること)などの症状を認めます。前回の妊娠で切迫早産・早産だった、母体が痩せすぎ、長時間の労働、若年・高齢妊娠、タバコなどが原因とされますが理由無く発生する場合も少なくありません。胎児心拍数陣痛モニタ(NST)でくり返される子宮収縮が観測されるとき、また経腟超音波検査で子宮頸管の長さ短縮が観測されるとき診断されます。治療の主体はまず安静・休養です。そのうえで子宮収縮抑制薬の投与を行います。

早産

全妊娠の約5%で発生するとされますが、近年増加の傾向にあります。切迫早産の診断で自宅安静が有効でないときは入院が必要です。それでも妊娠週数によっては産まれた赤ちゃんの治療が必要なため、出産前に高次医療施設へ緊急紹介(母体搬送)する場合もあります。当院での紹介先は、東北大学病院・仙台赤十字病院・宮城県立こども病院・仙台医療センター・仙台市民病院・東北公済病院などと連携して対応いたします。

妊娠糖尿病

妊娠中に初めて発見または発症(妊娠初期の検査で随時血糖100mg/mL以上)した糖尿病を妊娠糖尿病(GDM)といいます。そのほとんどは妊娠終了後に改善しますがその後も継続する場合もありますので、慎重な管理が必要です。なお血糖値異常が高度(空腹時血糖値126mg/mL以上)な場合は、巨大児などの胎児異常や母体の腎臓病などが発症する恐れがあり入院管理などの特別なケアが必要です。

前置胎盤・癒着胎盤

前置胎盤

胎盤が子宮口(赤ちゃんの出口)をふさぐ位置にあるものをいいます。200~300分娩に1件発症すると言われています。お産が進行するにつれて大出血し母子ともに危険なため、帝王切開による分娩となります。胎盤の位置によって全前置胎盤・ 部分前置胎盤・定置胎盤などに分類されます。妊娠前期に疑われても、胎児発育につれて子宮も引き伸ばされて胎盤位置が子宮口より離れる場合もあり、慎重な経過観察が必要で最終的に妊娠24週ごろの状況で判断されることが多いです。妊娠中、腹痛が無いのに出血を認める場合は注意が必要です。

癒着胎盤

子宮筋腫の手術や帝王切開などの子宮手術をご経験のかたや、体外受精で妊娠された場合などに子宮と胎盤がガッチリ付着して離れにくくなったり、無理に剥がすと産後大出血の恐れがある場合に癒着胎盤と診断されます。赤ちゃんが産まれた後、胎盤の剥離を試みますが大量出血の恐れがある場合は無理にはがさずそのまま経過観察したり、状況によっては子宮の摘出が必要な場合もあります。

静脈血栓症

娠子宮の増大で骨盤のなかの臓器が圧迫されると同時に、両足で行き来する血液の流れも不良になります。血液は流れがよどむと固まりやすくなり、血管を詰めてしまうほど発達してしまうと血栓症(けっせんしょう)になります。一般的に動脈の壁は外部からの圧迫に強く静脈は弱いので、静脈に出来やすいとされています。つわり(脱水で血液がドロドロになる)・高齢妊娠・長期間のベット上の安静(切迫早産や手術後)などがリスク因子です。軽いマッサージやウォーキングなどを適時行ったり、弾性ソックスの着用、間欠的空気圧迫マッサージ器などで予防します。

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