子宮、卵巣に関する病気について

婦人科診療子宮・卵巣の病気

子宮の病気

子宮内膜症

子宮内膜とは子宮の内側を覆う膜で、「月経周期にあわせて厚くなり受精卵をキャッチする役割がありますが、妊娠が成立しなければ剥がれて出血と一緒に外に出て、また次の月経周期で厚くなる」ことを繰り返しています。

月経の出血は大部分が腟を通って外に出ますが、一部は卵管を逆流しておなかの中にも流れ込みます。通常は数日たつと吸収されて残りません。しかし何かの理由で(原因はまだはっきりしていません)、吸収されて消えるはずの子宮内膜組織がおなかの中で生き残り増殖することで、月経痛を重くさせたり下痢などの様々な症状を引き起こすことを、子宮内膜症といいます。

女性のライフスタイルが変化して、昔と比べて結婚・妊娠年齢が上昇し妊娠回数も減少しているので、妊娠や授乳で途絶えていた月経の機会が多くなったことが、子宮内膜症を発症する頻度が増えた原因とされています。
内診、超音波検査、血液検査(CA125)などで診断します。

卵巣チョコレートのう腫

卵巣に出来た子宮内膜症が、月経のたびに出血となって溜まり、袋状に腫れる状態を卵巣チョコレートのう腫といいます。
腫れが大きくなると排卵しにくくなったり、破裂して強い腹痛が生じたりするほか、長期間放置するとがんに変化する場合もありますので慎重な経過管理が必要です。

子宮腺筋症

子宮内膜症が子宮の筋肉の中にもぐりこみ、増殖して子宮が腫れる状態を子宮腺筋症といいます。
20代後半から強くなる月経痛・腰痛・出血量の増加などの症状が特徴です。

骨盤子宮内膜症

卵管を経由しておなかの中に流出した月経血にまぎれた子宮内膜が、腸や膀胱など骨盤の内側の壁に定着して少しずつ増殖し、徐々に月経痛・腰痛・性交時痛・不妊症などの症状がひどくなる病気です。
重症化すると治療が大変なので、気になる症状があれば早めの対処が必要です。

子宮筋腫

子宮にできる良性の腫瘍(しゅよう)で月経痛・過多月経・不妊症・流早産などの原因の一つとして知られており、30歳以上の女性の約30%にあると言われています。

エストロゲン(女性ホルモンの一種)の影響で増殖するため、女性のライフスタイルが変化して昔と比べて結婚・妊娠年齢が上昇し妊娠回数も減少しているので、妊娠や授乳で途絶えていた月経の機会が多くなったことが子宮筋腫を発症する頻度が増えた原因とされています。子宮の中で発生する場所によって症状が出やすかったり、出にくかったりして発見がされにくい場合もあります。

症状や筋腫の大きさによってGnRHアゴニスト(女性ホルモン抑える薬)などで月経を一時的に休止させて月経異常をやわらげるか、手術による筋腫の切除などを行う場合があります。

子宮腟部びらん

子宮の出口から腟につらなる部位(子宮腟部)の粘膜が赤くただれて見える状態をいいます。
感染や性交渉により子宮腟部びらんがひどくなると少量の出血を伴う場合がありますが、がんの初期にも同様の症状が認められるので症状が気になるときには、がん検診を早めに実施しておくことが大切です。

子宮頸がん

子宮頸部(子宮の出口付近)にできるがんを子宮頸がんといいます。
20歳代の女性にも 発症リスクがあり注意が必要です。初期で発見されればほぼ100%治るので、早期発見のために年1回は検診を受けるようにしましょう。

最近、子宮頸がんの原因として「ヒトパピローマウィルス(HPV)」によるものが約60%と高率に認められることが分かりました。HPVは誰もが感染しうる、ごくありふれたウィルスでほとんどの場合は自然消失しますが、一部が数年かけてがん化するといわれています。

このため近年HPV感染予防に「子宮頸がんワクチン」が、国の推奨事業として広く投与されるようになりました。これにより将来の子宮頸がん患者数の減少が見込まれましたが、報道にもありますように、子宮頸がんワクチンによる副作用としての諸症状の報告が相次ぎ、一時(2014年冬現在)積極的な推奨は控えられるようになりました。

ワクチンそのものの有効性は広く認知されているだけに今後の発表が待たれるところです。その間は引き続き、定期的ながん検診を受けることが大切です。

子宮体がん

子宮本体の内側(赤ちゃんを育む場所)をおおう膜(内膜)にできるがんを子宮体がんといいます。
性器出血やおりものの増加・下腹部痛などで見つかる場合があります。子宮頸がんと異なり、更年期とそれ以降の40~60歳代の女性に発症リスクがあります。

初期に発見されれば子宮頸がんと同様に治癒率は高いので、40歳以降は内膜チェックを年に一度は子宮頸がん検診とともに受けるようおすすめいたします。

卵巣の病気

卵巣のう腫

通常の卵巣はうずらの卵ぐらいの大きさです。排卵する卵子を育てるために月経サイクルのなかで卵巣は日常的に膨らみしぼむ変化がみられるので、卵巣はとても腫れやすい臓器といえます。7cm程度まで大きくなると手術することが多いです。

漿液性/粘液性卵巣のう腫

いくつかの袋が集合した場合やのう腫壁が厚いと悪性の可能性があります。

皮様のう腫(奇形腫)

皮膚を構成する組織(毛髪・皮下脂肪)や歯・骨などの成分が潜りこむ腫瘍で、ほとんどが良性ですがまれに悪性の場合があります。

多のう胞性卵巣

ふつう月経サイクルにおいて片側の卵巣の1つの卵子を育てるために、1つの卵胞(卵子を育てる袋)が成熟します。

この卵胞が一度の月経サイクルで複数できてしまうことにより排卵に至らないため妊娠できなかったり、月経サイクルが長くなったり、無月経となったりすると多のう胞性卵巣症候群といいます。妊娠を急がないかたには規則正しい生活や体を冷やさないようにして代謝を高め、自律神経の調整力を高めることでホルモンバランスが改善され効率よく卵胞を成熟させて月経周期を整える方針とします。

妊娠を急ぐ場合は、排卵誘発剤を使用して妊娠機会を増やす方針とします。

卵巣出血

月経サイクルの排卵によってできる卵巣の傷から出血してしまう状態を卵巣出血といいます。少量であれば月経のある女性なら誰にでも起きる可能性がありますが、性交渉の刺激などで出血が大量になると急激な腹痛・低血圧・ショック状態となる場合があるので、早急に産婦人科の受診が必要です。

卵巣がん

卵巣は「沈黙の臓器」といわれ、卵巣に病気があってもかなり進行するまで気づかない場合が多く、死亡率が高い病気として知られています。

月経サイクルの排卵により卵巣が傷つき修復を繰り返している過程で、卵巣表面の細胞が異常に増殖するようになるのが卵巣がんといえます。女性のライフスタイルが変化して、昔と比べて結婚・妊娠年齢が上昇し妊娠回数も減少しているので、妊娠や授乳で途絶えていた月経の機会が多くなったことが卵巣がんを発症する確率が増えた原因とされています。

子宮がん検診を受診する際に、同時に超音波検査で卵巣が腫れていないかをチェックすることで早期発見につながる場合が多いです。

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