女性のライフステージとカラダの変化について解説

婦人科診療女性のライフステージとカラダの変化

(1)思春期(8~19歳)

思春期とは「初経(初潮)が始まってから月経が安定するまでの期間(日本産婦人科学会)」のことで、具体的には8~9歳から17~18歳までの時期をいいます。

女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)が少しずつ分泌されるようになり、皮下脂肪でカラダが丸みをおびてきて、胸がふくらんだり、陰毛やわき毛が生えてきたりと大人の女性のカラダに近づいていきます。

初経を迎えるのは10歳~14歳ぐらい(平均12歳6ヶ月)。まだその頃はエストロゲンをつくる卵巣のはたらきが未熟なため、月経周期や期間はまだ不安定で子宮の発育も未熟なことから月経痛(月経困難症)も起きやすいようです。思春期の後半ぐらいになって卵巣や子宮がある程度まで成熟すると、月経周期も安定し、月経痛も軽くなっていきます(ストレスや子宮内膜症などが原因で月経痛が続く場合もあります)。

また、この時期はカラダだけでなく、精神的にも大きく成長していきます。ただ、ココロとカラダの成長の速さが違うことが多いため、心身のバランスが崩れやすく、ココロの問題や病気が生じやすくなります。

(2)成熟期(20~45歳)

18~19歳から44~45歳くらいまでの時期が成熟期です。

女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が順調になり月経周期が安定し、心身ともに安定する時期といえるでしょう。体つきが女性らしくなるだけでなく、結婚や妊娠、出産育児や、仕事や趣味などにも積極的に関わっていける、人生のなかでいちばん充実した時期かもしれません。

とくに成熟期の前半はカラダが妊娠や出産にもっとも適した状態になりますし、体力もあるので、パワフルに人生を楽しむことができます。ただし、この時期に自分を過信してモデルのような体型を目指して無茶なダイエットをしたり、仕事も家庭も完璧にこなそうとしてがんばりすぎたりして、ココロやカラダに負担がかかる状態が続くと、ホルモンバランスが崩れ、年齢を重ねたときに体調不良の原因になることもあるので、気をつけましょう。

子宮顎がんは20歳から検診が必要です。また胸にしこりや違和感があったら乳がんの検診を受けておくようにしましょう。一方、成熟期の後半は責任のある仕事を任されたり、仕事と子育ての両立をしていたり、何かと慌ただしい時期です。ただ充実した生活とはうらはらに卵巣機能は少しずつ衰えてきて、エストロゲンの分泌が低下していきます。それとともに乳がん、子宮がん、子宮筋腫や、肥満や糖尿病などの生活習慣病にもかかりやすくなります。この時期になったら定期的に健康診断を受けることが大切です。
外見上の変化としては少しずつシワ・シミ・白髪などが出てきます。

(3)更年期(46~55歳)

閉経が起こる前後の5年間、年齢的には45歳ぐらいから55歳ぐらいまでを更年期と呼んでいます(日本産婦人科学会)。ただ、個人差がとても大きく30代後半から始まる人、50歳を過ぎてから始まる人など、さまざまです。卵巣のはたらきは成熟期の終わりぐらいから少しずつ落ちてきますが、更年期になる40代半ばあたりから機能低下がはっきりしてきます。

その結果、女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が減ってきて、やがて分泌されなくなります。こうしたカラダの変化がホットフラッシュ(のぼせ)・ほてり・発汗・イライラ、うつ症状といった更年期の症状(更年期障害)を引き起こしていると考えられています。

症状も人によって重い人も軽い人もいます。
「更年期をあまり気にせず、前向きに過ごす」ことが更年期を楽に過ごすポイントのようです。また、エストロゲンは妊娠や出産、女性らしいカラダをつくるといったはたらきのほかに骨密度を維持する、コレステロールを下げるなどたくさんのはたらきを持っています。そのため、エストロゲンの分泌がなくなると、骨粗しょう症や高血圧、肥満、がんなどの病気にかかりやすくなるので、健康診断は欠かさず受けた方がいいでしょう。

また成熟期の後半から始まった加齢による変化も、皮膚がたるんでシワが深くなる、シミや口元の毛などが濃くなるなど、さらに進んでいきます。

(4)老年期(56歳~)

更年期が過ぎた50代半ば以降を老年期といいます。

老年期を迎えると、女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌がなくなり、男性との差はほとんどなくなります。そのため、それまで男性に多かった生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病など)、がん、認知症、骨粗しょう症などの病気にもかかりやすくなります。骨粗しょう症や認知症では、骨折などによって寝たきりにつながりやすいことから深刻です。

とくに認知症の場合、本人が病気に気づきにくいことから、家族や周りの注意が必要になってきます。
このほか視力や聴力、筋力が低下してきたり、物覚えが悪くなったりしますし、シミやしわ、白髪が増え、髪の毛の量が減るなど、外見上も変わってきます。

このように一見、あまりよいイメージをもたない老年期ですが、想像力や判断力、経験を元にした能力は、若い人より老年期の人の方が豊富。最近では若いころにはできなかった夢を叶えたり、新しい趣味を始めたり、新しい地に移住して生活を始めたりするなど、老年期を第2の人生として、前向きに過ごしている人たちも増えています。

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