女性のカラダの構造について解説

婦人科診療女性のカラダの構造

女性特有の構造として生殖器と乳腺の構造と仕組みを説明します。生殖(せいしょく)をつかさどる器官を生殖器といい、女性の生殖器は体表にある外性器と体内にある内性器から構成されています。

外性器

1. 腟(ちつ)

子宮と外陰部をつなぐ長さ7cmほどの粘膜におおわれた器官です。ふだんは閉鎖していますが、性交や出産のときは筒状に伸展します。腟内では乳酸菌(デーデルライン桿菌)が存在することで酸性(ph3~5)となっており外部から子宮へ病原体が侵入しない環境を維持しています。

疲労やストレスなどで腟内環境が保てなくなると腟分泌物(おりもの)が増加します。病原体の増殖がひどくなると「腟炎」となって腟の粘膜を損傷したり、子宮内に感染がおよぶほか、おりものを介して膀胱炎の原因にもなり得ます。女性ホルモンの分泌が減少すると腟粘膜の潤滑性が失われて損傷し、違和感や少量の出血を認める場合もあります。

2. 外陰部(がいいんぶ)

外陰部は外側から観察される部位の総称で、以下に構成されます。

恥丘(ちきゅう)
恥骨を覆うように丘状に盛り上がった部位。
大陰唇(だいいんしん)
恥丘から会陰にいたる皮膚が隆起した部位で皮下脂肪と分泌腺組織に富み、静脈叢(細い静脈が網目状に発達している状態)が認められます。
小陰唇(しょういんしん)
大陰唇の内側にある、ひだ状の部位で皮下脂肪は少なく皮膚と粘膜の境界を構成しています。
陰核(いんかく)
陰核は恥骨の下、左右の小陰唇が上端で接合する部位にある小さな器官で男性の陰茎海綿体に相当します。知覚神経が鋭敏で性的興奮により膨張します。
腟前庭(ちつぜんてい)
まわりを小陰唇で囲まれた部位で腟の出口(腟口ちつこう)と膀胱からの尿道出口(外尿道口がいにょうどうこう)が開口しています。
バルトリン腺(ばるとりんせん)
膣前庭の外側下方に開口する分泌腺で、しばしば閉塞し腫脹することがあります。感染がおよぶと赤く腫れて痛みが生じ、歩行も困難になる場合があります(バルトリン腺膿瘍)。

3. 会陰(えいん)

膣前庭の下端から肛門までの間にわたる部位です。出産時に大きく伸展します。

内性器

1. 子宮(しきゅう)

子宮は下腹部骨盤内で膀胱の後方、直腸の前方に位置する洋ナシを逆さにしたような形の器官です。妊娠中に大切な赤ちゃんを育む「体部」と、出産まで赤ちゃんが簡単に出てしまわないよう硬く閉ざした出口である「頸部」に分類されます

  
  

子宮頸部(しきゅうけいぶ)
子宮体部と腟に連結する部位で、通常は円筒形で内側は僅かに開口していますが分泌液(頚管粘液)で塞がれており、雑菌の侵入を防いでいます。排卵期になると粘液量は増加し弱アルカリ性となって精子の通過を容易にして妊娠の準備が整います。この特性は不妊治療中の患者さまのタイミングを予測する検査にも利用されます。また子宮頸部は性交渉による影響を受けやすく、直接刺激による出血やヒトパピローマウィルス(HPV)による感染などから「子宮頸がん」の発症が問題となっています。
子宮体部(しきゅうたいぶ)
平滑筋という分厚い筋肉組織で構成された袋状の組織で、内腔は月経周期に応じて厚さが変化する子宮内膜(しきゅうないまく)で覆われており左右で卵管、下方で子宮頸管につながっています。子宮内膜は受精卵が着床するためのクッションとして厚く増殖しますが、着床しないと内腔から剥がれて月経(生理)となって出血とともに腟を通って排出されます。

2. 卵管(らんかん)

卵管は子宮体部から左右に伸びる管状の器官で、内腔は子宮内腔に開通し外側は腹腔内に開口しています。
卵巣から排卵された卵子と、腟・子宮を経由してたどり着いた精子が出会い、受精する場所でもあります。卵管は感染や子宮内膜症などにより通過障害や閉塞をきたしやすくなります。

3. 卵巣(らんそう)

卵巣は子宮の左右に位置し長径2~3cmの楕円球形の器官です。
子宮側と骨盤側の靱帯でハンモックのように支えられています。脳下垂体により制御された女性ホルモンを分泌して女性らしい体格を形成維持し、卵子を成熟・排卵させるなど生殖系内分泌機能をつかさどるはたらきをしています。

乳腺

適切な母乳分泌をうながす方法や赤ちゃんが安心して吸いやすい抱っこの方法などの指導や支援を得ることで、産後のお母さんの95%以上は母乳育児を成功させることができるといわれています。

セイントマザークリニックでは妊娠期間中から出産前後のお母さんのココロとカラダがどのように変化するか、医学的に十分理解し経験している医師と看護スタッフ・管理栄養士が、お母さんと赤ちゃんの個性を尊重しながら良き話し相手となって全力でサポートいたします。

一人でも多くのかたたちに母乳の大切さやメリットをご理解いただいて、無理なく楽しくかつ充実した育児のスタートができますよう願ってやみません。

1.母乳分泌のしくみ

「おっぱいはなるべく早く赤ちゃんに吸わせるほどよく出るようになる」「おっぱいを赤ちゃんに吸わせる回数が減ると出が悪くなる」「おっぱいを赤ちゃんに吸わせずに溜めておくと出なくなる」
これらは医学的に解明された事実です。

以下に母乳の産生と分泌およびその抑制に関連するホルモンなどの物質をあげてメカニズムを解説します。

(1)プロゲステロン

妊娠期間を通じてプロゲステロン値は高く、妊娠を維持するとともに乳房の発達をうながす一方で、プロラクチンを抑制しています。

(2)プロラクチン

出産で胎盤が娩出することでプロゲステロン値が低下し、これに反応してプロラクチン値が上昇して母乳が産生されます。

プロラクチン値は出産直後をピークとして徐々に減少(早くて産後7日目、遅くても産後2週間で妊娠前レベルまで減少)してしまいますが、乳頭を刺激するたびに一時的に上昇します。このため頻回授乳はプロラクチン値の維持に必要不可欠です(一日8回以上の授乳が推奨されています)。

(3)オキシトシン

児が母親の乳頭を吸う刺激によって急激にオキシトシン値は上昇し母乳が分泌されます(射乳反射)。オキシトシンは同時に子宮収縮をうながす作用もあり、授乳後しばらくは子宮収縮痛(後陣痛)が生じる場合もあります。

オキシトシンは乳頭刺激だけでなく母親が児を見ていたり声を聞いたり、児のことを考えるだけでも分泌がうながされるようになります。それだけでなく、オキシトシン値の上昇により母親の児に対する愛着行動が促進されることが知られており、オキシトシンは「愛着ホルモン」とも言われています。

さらにはストレスに対する耐性を強化する作用もあり一般に授乳中の女性は交感神経系の反応が少ないとされています。その一方で母親が不安などの精神的ストレスや疼痛刺激などを感じると、オキシトシン値が低下して母乳分泌が減少する恐れもあります。

(4)乳汁産生抑制因子(ホエイ蛋白)

乳汁中には乳汁産生抑制因子(ホエイ蛋白)が含まれることが知られています。これは乳汁が長時間乳房内にとどまっているとその濃度が上昇して乳汁産生が低下してしまいます。つまり出来るだけ授乳後に乳房内に乳汁を残さないことが次回授乳までの乳汁産生にとって重要といえます。したがって、児が直接に母親の乳頭を吸えない場合や飲み残しがあるときは搾乳(乳房からたまった乳汁をしぼりだすこと)が必要となります。

2.母乳育児のメリット

(1)乳児感染症の発生率と重症度を低くださせる

細菌性髄膜炎・中耳炎・呼吸器感染症・下痢・壊死性腸炎・尿路感染症・菌血症
※母乳に含まれるオリゴ糖が腸粘膜をコーティングして細菌の侵入を防ぐほか、母体から移行した『分泌型免疫グロブリンA』がウィルスや細菌を捕まえて増殖を防いでいます。

(2)年長児~成人後の有病率を低くださせる

肥満・糖尿病・高コレステロール血症・喘息・白血病

(3)母乳育児の確立による母子相互作用

幼児虐待・少年犯罪・少年院収容などの背景に母乳哺育率で差が認められます。

(4)低コスト、災害時などで社会インフラの不備に対応しやすい

人工乳の提供に必要な各種備品(哺乳びんや消毒器具)、お湯、電気・ガスなどの不備に強い。

(5)その他

乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防が期待できる。

3.母体からの感染、嗜好品の影響について

(1)感染
母乳中に移行し乳児に感染する恐れがあるもの
エイズ(HIV)、ヒトT細胞白血病ウィルス(HTLV-1)、サイトメガロウィルス(CMV)
母乳中に移行が認められるものの乳児感染の報告が認められないもの
単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹ウィルス、B・C型肝炎ウィルス、風疹ウィルス、ムンプスウィルス(おたふくかぜ)、EBウィルス
母乳移行の報告がないもの
インフルエンザウィルス、かぜ症候群、ウィルス性胃腸炎(ノロウィルス、ロタウィルスなど)
細菌性乳腺炎
抗生物質や消炎鎮痛剤を飲みながらでも患側・健側両方とも直接授乳可能です。乳房が化膿するほど感染が増悪した場合は患側の母乳はしぼって破棄しますが、健側の乳房は直接授乳が可能です。
(2)嗜好品
カフェイン
母親のカフェイン摂取から母乳への移行は1%以下であり、一般の摂取量から大きく逸脱しなければ特に制限はありません。
アルコール
母親の飲酒後1時間以内に血中アルコールの90~95%が母乳に移行します。授乳期間中のアルコール摂取は極力避ける必要があります。
タバコ
ニコチンは母乳中で、母体血中濃度の1.5~3倍に濃縮されます。喫煙は乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険因子でもあり、受動喫煙も含め家族の協力を得て家庭内の禁煙が必要です。
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